経済学部一の人気者が同じ学部の大人しい女の子に一目惚れした理由│Quiet Strength×Soft Strength
 それを受け取って何て言おうか迷った。その言葉の真意を、ちゃんと受け止めたと伝えたい。でも、どう言えば。

 迷った挙句、綾音をぎゅーっと抱き締めた。彼女の言うことが今なら分かる。感情が動く感覚。綾音に一目惚れした時ですら、こんな感覚ではなかった。けれどその綾音が触れたから感情が揺れる。普段は誰も立ち入らない場所にあるそれに触れられる唯一の人。

 やっぱり涙は出ない。でも、その代わりに零れない感情が自分の中に満ちていく。

 静かに深く息を吸い込んで吐き出す。綾音の周りの空気は自分の中に入り込んで軽く、綺麗にしてくれる。いつも。

「…ありがと」

 その言葉に、綾音が安心したように体の力を抜いたのが伝わってきた。前回この部屋に来た時、好きだと言ってくれた事よりもずっと大きな愛情を示してくれた綾音が欲しくて堪らなくなった。本当は、ちゃんと彼女のタイミングを待とうと思っていたのに。どうしても欲しい。今すぐに。

「…綾ちゃん」

 顔を覗き込むと驚くでも怯えるでもない綾音と目が合う。ああ、大丈夫なんだと分かった。キスをして、額が触れるような距離で言った。

「今日さ。帰らないで。お願い」

 その言葉に綾音は困った様に視線を逸らす。また頬を染めて、震えて、でもそのまま。「うん」と頷いた。
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