訳あり王子の守護聖女
 彼が何が言いたいのかわかって、胸の奥が温かくなった。
 やっぱりルカ様は優しい方だ。

「……わかりました。もう下民と自分を卑下するのは止めます」
「ああ」
 それでいい、というように、ルカ様は頷いた。

「部屋に入ってくるなり跪かれて話をする暇もなかったが、改めて聞きたい。一体なんでお前は死にかけてたんだ? 崖から落ちたのか? そもそなんで夜の山に行ったんだ。ウィアネの花目当てか?」

 ウィアネの花はある一定の時期、それも満月の夜にだけ咲く不思議な花だ。

 五枚の白い花弁の中心に黄金の光を灯して咲くその姿はえも言われぬほど美しく、春の夜には花見の宴が催されたりする。

「はい。その通りです」
 ローザに崖から突き落とされたことを正直に言うか、それとも隠すか、私は迷った。

 ルカ様はアンベリスの王子だ。
 エメルナの下民が自国でどんな目に遭ったところで何ら関わりのない人だ。

 余計なことを言って、心労をかけたくないしなあ……。

「花見に出かけて、足を滑らせました。私の不注意です」
「本当に?」
 ルビーのように赤い瞳が私を射抜く。
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