この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!
「俺は料理人だったんだ」
「まあ、そうなのね」

 じゃあ、なおさら都合がいいじゃない。私は興奮して声を出した。

「経営不振で勤めていた店がなくなって職を失ってしまい、途方に暮れていたんだ。だが、また料理を皆に振る舞えるのなら、俺はやりたい。俺の料理で皆が笑顔になるところを見たいんだ」

 拳をギュッと握り、男性はグッと唇をひきしめた。

「だからお願いします、俺を雇ってください」

 男性は深々と頭を下げた。

「ええ、もちろんよ! ここで美味しい料理を作って、皆に食べさせてあげてちょうだい」

 すると次々と声が上がる。

「私も! 料理が得意です!」
「俺、料理は苦手だけど、大工仕事が得意なんだ! ここの剥がれた床を直すことができます!」

 皆の士気が高まったようで、私はにっこりと微笑む。

「では、皆さん、各自できる仕事を、よろしくお願いしますわ」

 ロゼールは人を引きつれ、屋敷に食糧を取りに行った。護衛としてきているので、最初は私の側を離れるのを渋った。

「もし問題があったら、困ります。今回雇った中には男性もいますし」
「ドリーがいるから大丈夫よ」
「ですが……」
「私では不満だとでも?」

 ロゼールが渋っているとドリーがズイッと顔を前に出した。

「人のことより自分のことを心配した方がいいんじゃない?」

 ドリーはロゼールに向かって、ポイッとなにかを投げつけた。

「わ、俺の小銭入れ。いつの間に!?」
「ついさっき。どのぐらい気配に敏感か試させてもらったけど、全然だめね。私が近づいたことにも気づかないなんて。それで護衛なんてできるの? 愚鈍」
「……愚鈍」

 辛辣な言葉を投げられたロゼールは唖然とした。
 ドリーは両手を組み、ロゼールの前に立つ。

「ここは大丈夫。シャルロット様には誰も危害を加えさせることはできない。私がいるから」

 ドリーは堂々と胸を張る。

「それよりも早く食糧を持ってきて! 屋敷の人間に話を通す人がいないと困るわ」

 しばらくするとロゼールはようやく納得したようだ。

「わかりました、行ってまいります」
「お願いね」

 そして私は腕まくりをする。

「では、私も手伝いますか。ピカピカに磨き上げるわよ。さあ皆さん、準備をよろしくお願いしますわ」

 張り切って手を叩くと、皆が準備に取りかかった。

 ***

 掃除に夢中になっているとロゼールが人を連れて戻ってきた。

「シャルロット様、馬車に詰めるだけ食糧を持ってきました」
「そう、ありがとう」

 皆で食料を運びだし、テーブルに並べた。

「すごい、こんなに豪華な食材を使ってもいいのでしょうか?」
「もちろんよ。全部使って!」

 テーブルに並べられたのは塩漬けの肉の塊や南部特産の野菜たち。
 私にはなじみある食材だけど、北部では珍しいみたいだ。

「メニューはどうしましょうか? この食材では良いのがあるかしら?」
「そうですね……」

 料理人だと名乗った男性、名前はドルクと言った。

「具だくさんのスープはいかがでしょうか。凝った料理じゃなくても、じっくり煮込めばすごく美味いと思うのです。これだけの食材を使えば」
「そうね。具だくさんなら、お腹いっぱいになりそうだしね」

 野菜がゴロゴロに入ったお肉のスープ。うん、美味しそうじゃない!

「それでいきましょう! 具だくさんスープで」

 皆が張り切って賛同してくれた。

「じゃあ、野菜を洗う人、切る人、手分けしましょう。あとは食器を出す人も。もし、なにか足りないものがあれば遠慮なく言ってちょうだい。購入するから!」

 そして各自得意だと思える持ち場につき、作業を始めた。早い時間から作業を始めたので、午後にはスープが出来上がった。

 大きな鍋二つに煮込まれたスープはとても美味しそうだ。

「まずは皆で味見をしてみましょう」

 ドルクが皿に取り分け、皆でいただいた。

「美味しい!」
「本当だ、こんなに美味しいスープ、初めて食べたわ!」

 皆からも好評の声を聞き、ドルクもとっても満足そうだ。

「皆さん、味見は終わったかしら?」

 食堂をぐるりと見回すと、皆の満足そうな顔が見て取れた。

「じゃあ、今から炊き出しを開始するわ。トビー」

 名を呼ばれた少年はびくりと肩を揺らした。

「炊き出しをしていることを皆にお知らせしてきて。まずは子供が優先よ」

 トビーはコクコクとうなずくと、走って食堂を飛び出した。

 その後ろ姿を見て、にっこりと微笑んだ。

「さあ、忙しくなるわよ。みんなで配膳なども手伝いましょう」

 その場にいた皆が一致団結してうなずいた。
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