ワンナイト限りの割り切り関係に「もう一度」は無粋です! ~正反対な私たちは今日も意見が合いません~
最低最悪な再会
あの夜から数日。
私の日常は、何事もなかったかのように平穏だった。
段々と消えるあの日の記憶を何となく寂しく思いながら迎えた月曜日の朝。1週間が始まることに憂鬱になりながらオフィスに足を踏み入れた瞬間、何とも言えない違和感を感じた。いつもは倦怠感に満ちているフロアが、どこか浮ついた熱を帯びている。まるで転校生が来る前の教室のような雰囲気だ。
「おはよう、小春!」
「お、おはよう…。朝から元気いいね」
「お?その様子だと知らない感じ?」
「何が?」
「なんと今日、本社のエースが異動してくるんだって!!」
仲のいい同期の日葵が興奮気味に耳打ちしてきた。
「敏腕で有名な課長補佐、って噂。若いのにかなりの実績があるらしくて……こんな時期に異動なんて、何か特別なプロジェクトでもあるのかな」
「確かに珍しいね」
パソコンを立ち上げながら、相槌を打つ。
なるほど、だからこんなにも盛り上がっていたのか。女子の盛り上がりを見るに、社内でかなりの有名人らしい。業務外のことに疎いため分からないが、今日来るとなれば少しは興味を惹かれる。
そんなことを考えていれば朝礼の時間になり、全社員が整列する。やはりどこかソワソワした空気に笑いながら課長が大きく頷いた。
「さて、噂ですでに知っている人もいるようだが、今日から新しいメンバーがうちに加わる。課長補佐として入ってもらうが、助け合いの精神を忘れないようにな」
皆が頷いたのを確認してから、課長は扉に向かって「入ってくれ」と声を掛けた。ガチャリと開く扉から出てきたのは、清潔なイメージを抱かせる高身長な男性だった。
「本日付で配属となりました、風間 亮一です。よろしくお願いいたします」
その低く落ち着いた声を聞いた瞬間、私は血の気が引くのを感じた。
パリッとしたスーツに身を包み、非の打ち所のない笑みを浮かべているこの男にあまりにも見覚えがありすぎる。
__リョウ、さん?
マッチングアプリで出会い、お互いの本名も知らないまま一夜を共にした男が、あの時と変わらない笑みを浮かべてそこに立っていた。
まさか。ありえない。
世界はこんなにも狭く、そして残酷なのだろうか。
混乱する頭で彼を見つめていると、ふと視線が絡みそうになる。何も考えないまま、反射的に視線を逸らしてしまった。ロクに繕うこともできず、ひたすらに心臓の鼓動を鎮めようと必死になる。
気づかないで。他人だと思って。あんな流れで出会い別れた「ハナ」が、目の前で事務服を着ている「氷川 小春」だなんて、絶対に気づかないでほしい。
そんなささやかな願いは、やがて無情な運命の前にあっけなく打ち砕かれることになるなんて、この時の私は知る由もなかった。
私の日常は、何事もなかったかのように平穏だった。
段々と消えるあの日の記憶を何となく寂しく思いながら迎えた月曜日の朝。1週間が始まることに憂鬱になりながらオフィスに足を踏み入れた瞬間、何とも言えない違和感を感じた。いつもは倦怠感に満ちているフロアが、どこか浮ついた熱を帯びている。まるで転校生が来る前の教室のような雰囲気だ。
「おはよう、小春!」
「お、おはよう…。朝から元気いいね」
「お?その様子だと知らない感じ?」
「何が?」
「なんと今日、本社のエースが異動してくるんだって!!」
仲のいい同期の日葵が興奮気味に耳打ちしてきた。
「敏腕で有名な課長補佐、って噂。若いのにかなりの実績があるらしくて……こんな時期に異動なんて、何か特別なプロジェクトでもあるのかな」
「確かに珍しいね」
パソコンを立ち上げながら、相槌を打つ。
なるほど、だからこんなにも盛り上がっていたのか。女子の盛り上がりを見るに、社内でかなりの有名人らしい。業務外のことに疎いため分からないが、今日来るとなれば少しは興味を惹かれる。
そんなことを考えていれば朝礼の時間になり、全社員が整列する。やはりどこかソワソワした空気に笑いながら課長が大きく頷いた。
「さて、噂ですでに知っている人もいるようだが、今日から新しいメンバーがうちに加わる。課長補佐として入ってもらうが、助け合いの精神を忘れないようにな」
皆が頷いたのを確認してから、課長は扉に向かって「入ってくれ」と声を掛けた。ガチャリと開く扉から出てきたのは、清潔なイメージを抱かせる高身長な男性だった。
「本日付で配属となりました、風間 亮一です。よろしくお願いいたします」
その低く落ち着いた声を聞いた瞬間、私は血の気が引くのを感じた。
パリッとしたスーツに身を包み、非の打ち所のない笑みを浮かべているこの男にあまりにも見覚えがありすぎる。
__リョウ、さん?
マッチングアプリで出会い、お互いの本名も知らないまま一夜を共にした男が、あの時と変わらない笑みを浮かべてそこに立っていた。
まさか。ありえない。
世界はこんなにも狭く、そして残酷なのだろうか。
混乱する頭で彼を見つめていると、ふと視線が絡みそうになる。何も考えないまま、反射的に視線を逸らしてしまった。ロクに繕うこともできず、ひたすらに心臓の鼓動を鎮めようと必死になる。
気づかないで。他人だと思って。あんな流れで出会い別れた「ハナ」が、目の前で事務服を着ている「氷川 小春」だなんて、絶対に気づかないでほしい。
そんなささやかな願いは、やがて無情な運命の前にあっけなく打ち砕かれることになるなんて、この時の私は知る由もなかった。