ワンナイト限りの割り切り関係に「もう一度」は無粋です! ~正反対な私たちは今日も意見が合いません~
手の平の上で転がされている気がする
風間さんが異動してきてから、数週間が経過した。
彼からのアタックは、もはやオフィスの日常風景の一部と化していた。最初こそセクハラで法務部に摘発してやろうかと思ったが、如何せんセンシティブな内容に触れる会話をしたのは再会したあの日だけ。それからは、ただの気遣いや日常会話レベルだった。どうせなら確実に勝てる事例で摘発したい私は、悔しくもギリギリと歯を鳴らすしかなかった。
最初はハイスぺな風間さんに色めき立っていた女性社員たちも、彼のあまりに揺るぎない態度を目の当たりにし続けた今では、私たちを遠巻きに眺めるようになってしまっていた。ある意味では平和になったと言えるが、私にとっては外堀を埋められ続けているような奇妙な居心地の悪さが続いていた。
「氷川さん、今よろしいですか?」
「…はい。どうされましたか?」
パソコンを打っていた手を止めて振り返れば、風間さんが資料を片手に私を見下ろしていた。
「こちらの資料なのですが、もう少しだけ文字のサイズを大きくしていただくことは可能ですか? 会議に参加される常務は文字が大きい方が好まれるので、お時間があればお願いしたいです」
仕事の時は割り切って、ただの上司と部下になる。それが当然ではあるものの、この割り切りの良さを、ぜひ私生活にも持ち込んでいただきたいと思ってしまう。はたして願いすぎだろうか。
「分かりました。午後には修正したものをお渡ししますね」
「ありがとうございます」
わざわざ丁寧にお辞儀をする風間さん。こういう所が人に好かれるのだろうと思う反面、それでも彼に惹かれない自分に呆れてしまう。人に好意をもつということに、とことん向いていない。
彼からのアタックは、もはやオフィスの日常風景の一部と化していた。最初こそセクハラで法務部に摘発してやろうかと思ったが、如何せんセンシティブな内容に触れる会話をしたのは再会したあの日だけ。それからは、ただの気遣いや日常会話レベルだった。どうせなら確実に勝てる事例で摘発したい私は、悔しくもギリギリと歯を鳴らすしかなかった。
最初はハイスぺな風間さんに色めき立っていた女性社員たちも、彼のあまりに揺るぎない態度を目の当たりにし続けた今では、私たちを遠巻きに眺めるようになってしまっていた。ある意味では平和になったと言えるが、私にとっては外堀を埋められ続けているような奇妙な居心地の悪さが続いていた。
「氷川さん、今よろしいですか?」
「…はい。どうされましたか?」
パソコンを打っていた手を止めて振り返れば、風間さんが資料を片手に私を見下ろしていた。
「こちらの資料なのですが、もう少しだけ文字のサイズを大きくしていただくことは可能ですか? 会議に参加される常務は文字が大きい方が好まれるので、お時間があればお願いしたいです」
仕事の時は割り切って、ただの上司と部下になる。それが当然ではあるものの、この割り切りの良さを、ぜひ私生活にも持ち込んでいただきたいと思ってしまう。はたして願いすぎだろうか。
「分かりました。午後には修正したものをお渡ししますね」
「ありがとうございます」
わざわざ丁寧にお辞儀をする風間さん。こういう所が人に好かれるのだろうと思う反面、それでも彼に惹かれない自分に呆れてしまう。人に好意をもつということに、とことん向いていない。