苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 すると、あのドッグカフェで見かけたような、優しくて柔らかな笑顔が目の前にあった。

「もしかして芦原は、俺がそう言った方が安心するんじゃないか?」

 課長は私に尋ねながら、声を上げて笑った。
 急に心臓がギュッと掴まれたように苦しくなる。それと同時に、じわじわとした熱が指先から全身へと広がっていく。

 こんな笑顔を見てしまったら、これからどんな風に感情をコントロールしたらいいんだろう。
 たとえここへ来た理由が仕事の延長だとしても、この素敵な空間に課長と一緒にいることに変わりはない。

 今夜だけは、少しぐらい勘違いしてもいいよね……。

 まずワインで乾杯をして、その味をゆっくり堪能した。空腹にアルコールが効いて、すぐにいい気分に包まれる。
 やがて創作フレンチ料理が運ばれ、魚介を使った色とりどりのサラダや、リゾットなどが並べられた。
 目の前のものを少しずつ味わう。どの料理も、とても美味しいと感じた。

 けれど私は、料理を味わっていることよりも、すっかり課長との時間に浮かれてしまっている。
 ぼんやりしているところへ、再び楽しそうな顔をこちらへ向けた。

「ここへ連れてきた理由は、まだ他にもあるんだ」

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