苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
今夜はただ、同じ職場で奮闘している上司と部下として、リラックスした時間を過ごせればいいと感じた。
それから課長は再びワインのボトルを追加する。
二人で調子よく飲んでしまい、ふわふわとした感覚に心が浮遊する。アルコールが気持ちを緩め、ふと気になっていたことを尋ねたくなった。
「課長って……私生活も仕事モードなんですか?」
「何だよ、それ。どういう意味で言ってる?」
こちらの質問に、彼は眉根を寄せた。
「実はあの停電があった昼間、イベント会場で、課長がお仕事しているの見かけたんです。私も近くで用があって、ちょっと立ち寄ったので」
「あぁ。あの仕事は途中まで関わったから、つい気になって。芦原だって、休日も仕事モードなんだな」
お互い様のような気がして、思わず二人で顔を見つめると、笑いあった。
「あんまり仕事に夢中すぎると、彼女さんに怒られますよ~」
思わず口にしてしまった言葉に、課長の表情が硬くなる。
「――彼女!? いったい何の話だ?」
「あっ、いえ。特に気にしないでください。ただの噂話を聞いただけで……」
まずいことを言ってしまったらしい。慌てて口を閉ざしたけれど、冷ややかな空気に、こちらも気まずくなる。