苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

「噂か……。勝手な憶測だけは早く伝わるな。――で、俺は今どんな女性と付き合っているって?」

 低い声で尋ねられ、急に焦り出す。せっかくいい雰囲気だったのに。課長から真剣に尋ねられ、今さらごまかせない。

「えっと……確か、髪の長い綺麗な女性と歩いていたとか……」
「髪の……?」

 課長は難しそうな顔をして、思考を巡らせた。

「そうか。ここ最近、俺が女性と歩いているとしたら……たぶん、伽耶のことかな?」

 その名を聞いてドキリとする。ドッグカフェのオーナー女性を、下の名前で呼んだ。ということはやはり、彼女が付き合っているお相手の女性ということになる。
 まさか、このタイミングで知らされるなんて。せめて今夜は気分よく酔っていたかったのに。

 急に周囲の景色が色褪せたように感じた。心の中が揺れ動き、その感情に自分でも驚く。様々な感情が湧き上がり、言葉を失ったまま、笑顔を浮かべる余裕もない。

「……ったく。何でも噂話にしたいんだな」

 課長はそう呟くと、俯いたままの私を覗き込むようにして声をかけてきた。

「暗い顔をして、どうした?」

 そう告げられ、思わず顔を上げる。必死で口元を引き上げ、笑顔を作ろうとする。
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