苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
私の背後には160センチほどのパーテーションが置かれ、席が設けられていた。箸は、どうやら背後にある座席の方へ転がってしまったらしい。パーテーションの反対側を覗き込むようにしていると、背後に座る人がこちらを向き、凝視していることに気が付いた。
視線が重なり合い、そのまま動けなくなる。
「あ……」
ショックで視界が崩れかけそうになり、思わず息を止めた。
見慣れたスクエアフレームのメガネ。その奥にある冷たい眼差し。その人物は、間違いなく藤生課長だった。
どう対処するべきか。思考がフリーズして言葉も出ない。
一見、そのシャープな顔立ちとクールな目つきは魅力的に映る。けれども身近な者にとっては、それが余計に感情を持たない機械のように見え、いっそうこちらを不安にさせた。
これ、悪夢じゃないよね?
背後を振り返ったままお互い無言でいると、脇から男性の声が掛かった。
「あれ、二人で見つめ合ってどうしたの!? もしかして、藤生の知り合い?」
そこには、ウェーブヘアーで細身の背が高い男性が立っていた。彼はこちらを見下ろし、にこやかな笑顔を浮かべている。
「いや……別に」