苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

「もっと飲むか?」

 課長がボトルを傾ける。
 そうして二人でワインを飲んでいるうちに、すっかり出来上がってしまう。
 普段はポーカーフェイスの課長も、柔らかな目元で笑い声を上げている。今夜は少しだけ酔っているように見えた。

「でも、意外だな。芦原は、あまり噂話に興味がないタイプかと思ってた」

「べ、別にそういうわけじゃ……。ただ、課長のことは会社で一切私生活が見えないので。親しくなるには、少しでも知っておきたくて。だから、きっとみんなも気になるんだと思います」

「そうだな。仕事場では、感情をなるべく出さないように気を付けている。だから、アンドロイドと揶揄されるんだろう」

 自嘲気味に笑うと、彼はグラスを傾けた。こちらも残ったワインを流し込む。

「いえ、課長のような存在は貴重です。きちんと根拠を示してもらえるし、自分を律して仕事を進める姿勢とか……」

「もういいよ。褒められ過ぎで居心地が悪い。ただ、気を緩めないように注意はしてる。たとえ、気になる女性がいるとしてもな」
「――え?」

 聞き逃せないフレーズに、思わず声が漏れる。

「いや……たとえば、の話しだ」

< 110 / 193 >

この作品をシェア

pagetop