苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
課長はすぐに否定した。そして口元を引き締めると、視線を外へ向ける。片手でメガネの縁を上げ、顔を隠すような仕草をした。すぐにピンとくる。
違う。きっと今の表情、本当の気持ちだ……。
普段は機械のように冷静で感情を表に出さないけれど、本当の課長は真面目で誠実な性格だ。嘘なんて簡単に言える人じゃない。
「飲み過ぎたな。アルコールが効いてきたようだ。もうやめにしよう」
課長は時計を確認し、傍にあるグラスに入った水を口にした。
最後まで聞きたくて、何度も心の中で質問を繰り返す。これ以上踏み込める立場でもないのに。
でも、こんな風に軽く口にできるということは、私が無関係だという証拠だ。そんなこと分かってる。それなのに、どうして私はこんなにも、課長の気になる女性が知りたいんだろう。
店を出る頃には足元がふらつき、視界が揺れている。
「おい、大丈夫か?」
「はい……」
お酒に弱いわけではないけれど、こんなに酔ってしまったのは久しぶりだ。
「そこの窓際にソファーがある。少し休んで行こう」
廊下を十メートルほど進んだ先には大きな窓があり、そこへ三人ほど座れそうなファブリックソファーが置かれている。