苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
二人でゆっくり近付くと、足元から天井まで広がるフルハイトウインドウの窓からは、夜景が眩い宝石の粒のように見えた。その輝きに思わず見とれ、窓際へ歩み寄る。
「座らないのか?」
「大丈夫です……。ここは何だか空気が冷えてて、気持ちいいです」
足元にはたくさんの光の粒が瞬き、その灯り一つ一つに誰かが存在するんだろうなと思いを馳せる。
「自宅がタワーマンションだと、毎晩こんなに明るいんですかね? 眩しくて、眠れなくなりそう」
「暗くすると、眠れないんだろ?」
からかうように告げられ、こちらも思わず吹き出してしまう。
「確かにそうでした。でも、こんなに綺麗だと、外の景色ばかりが気になって。逆に眠れなくなりそうです」
先ほどいたレストランから離れているせいか、この場所に人影はない。廊下の天井にあるセピア色のダウンライトが、静かに私たちだけを照らしていた。
酔いが回っているおかげで、今は無理に言葉を交わさなくても、ただ二人で外を眺めているだけで心が安らぐ。
「あ、ほら。ライトアップしてますよ。あの辺ですよね! 先日のイベントをやった、扇型をしてる新しいビル」
「ここから見えるのか?」