苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 翌日、午前中は商品開発課からサンプルが仕上がってきたので、企画課全体で試食会が行われた。午後はそれを元に開発担当者とのミーティングをこなす。夕方にはCチームが担当する商品の新パッケージデザイン案をまとめ、デザイン課と打ち合わせを行った。

 目まぐるしい一日を終え、何とか終業時間を一時間過ぎたところで帰宅できそうだ。
 こちらも忙しいけれど、課長は朝から取引先との打ち合わせらしく、外出したまま顔も見ていない。

 あの夜から、私はすっかり何かを患ってしまったらしい。
 課長の顔を思い浮かべる度に気持ちが揺さぶられるのだから、相当重症だ。きっと普段、恋愛に耐性がない分、優しくされて勘違いしてしまっているのかもしれない。

 課長が気になる女性って……。

 どうしても頭の片隅にはそのことが浮かんできてしまう。



 帰り支度を済ませ、エレベーターに乗り込む。一階に下りて、セキュリティゲートをくぐると、ようやく気が抜ける瞬間が訪れた。
 ひと気のないエントランスを歩く途中、私に近付く人影が目に入る。男性がこちらへ手を上げ、近付いてくるのが見えた。

「久しぶり」

 その顔を見て感情のスイッチが一気に遮断され、足が止まる。

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