苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
サイドを刈り上げた短い髪型で、自信に満ちた表情を浮かべてるその相手は、元カレの加瀬さんだった。痩せ型で、身長はそれほど高くなはなく、ブランド物のスーツばかりがやけに目立つ。
「どうして……?」
何とか声に出して尋ねる。頬が強張り、視線を上げられない。
「最近、エステにはまっててさ、偶然、水樹さんに会ったんだ。明奈がここにある会社に転職して、まだ彼氏もいないって聞いたよ。もしかして、まだ僕との関係を忘れられずにいるんじゃないかと思って」
どう勘違いすればその考えに辿り着くのか、勝手な考え方は相変わらずだ。茜が働くエステ店へ行き、私の情報を得たというけれど、本当に偶然なのかは分からない。
プライドを傷つけると怒らせてしまうことを知っていた私は、当時、別れのきっかけを仕事の忙しさに求めた。その時にタイミング良く、加瀬さんには同じ部署の女性が気になり始めていたらしく、すんなり別れることができたのだ。今さら何を求めて私の前に現れたのだろうか。
「それで、私に何を……?」
「最近、明奈のことばかり思い出して。あの頃、僕を支えてくれたよね。そんな女性、他に見つからなかった。今、僕は間違いなく出世コースにいる。最近、マンションも買ったんだ。あと必要なのは、家庭を支えてくれる女性だけだ。だから、僕たちやり直さないか?」