苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 二人でエントランスの自動ドアをくぐる。歩いてすぐ近くにあるタワー式の駐車場へと案内された。操作パネルを入力すると、一台の黒いSUVが現れる。

「仕事の関係で、今日は車で来ている。送るよ」
「あ、あの……でも課長」

 先ほどのことは何も聞けず、ただ心臓の鼓動だけがバクバクと音を立てている。
 助手席のドアを開けられ、乗るように促された。

「ありがとうございます」

 課長が運転席に乗り込むと、車は静かに走り出す。彼は黙ったまま、まっすぐな大通りをしばらく進み、信号機が赤に変わって車が止まった。

「ごめん、勝手なことをした。二人がエントランスで話をしているところを偶然見かけて、関係ない俺が出る必要はないと思ったが、我慢できなかった。上司と伝えるつもりだったはずが……」

『俺の彼女』という言葉が耳に残り、何度となく繰り返される。いっそ本当のことだったらいいのに……。

「いえ、とても助かりました。あれなら、二度と来ないですから。課長には全部伝わっているみたいなので、今さら取り繕う必要もないですね。彼、元カレです。ホント、最低ですよね。あんな人とどうして……私、どうして付き合ったんだろ」

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