苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 今までのことを思い出し、怒りで声が震える。まともな男性を見抜けない自分自身にも問題があるような気がして、恥ずかしくなった。でも、庇ってくれた課長の言葉はとても嬉しい。色々な感情がこみ上げ、思わず爆発しそうになり、ひたすら前だけを見つめた。

「あの頃の私は、言い返すこともできなくて。髪型から、メイクから、男性好みに合わせることは普通だと言われて……。自分を抑えつけて、相手に合わせることが幸せだと思い込んでいました。でも、それにも限界が来て」

 いつの間にか頬には温かいものが伝わる。膝に置いた手の甲に、ぽたぽたと雫が落ちた。

 再び車が信号で止まると、課長はハンカチを取り出して私の手元にそっと差し出す。「大丈夫です」と声に出そうとしても、なぜか言葉にならない。素直に受け取ったハンカチで目元を押さえながら、夜の街が流れていくのを見つめた。

 課長は黙ったまま車を走らせる。少し渋滞したものの、一時間ほどで私が住むマンションに到着した。

 車を停めると課長が運転席を降りて、私が座る助手席へと回り込む。そして、まるで恋人をエスコートするかのようにドアを開け、片手を添えて下ろしてくれた。気恥ずかしくなって、小声でお礼を伝える。

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