苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

「あぁ。そういう話ね」

 茜はすぐに、納得したような返事をした。

「明奈は彼のこと、好きなんでしょ? それなら、はっきり想いを伝えればいいじゃん」
「違うよ。これは、課長のことを理解するために……」

 何を今さら、必死に隠す必要があるのだろう。自分の言葉に違和感を覚えた。

「そう。違わないよ……。会えば会うほど、好きになって……もっともっと課長のこと知りたいって思う」
「分かった。それとなく聞いてあげるよ。でも、自分の気持ちは隠してちゃ伝わらないんだよ」

「うん……」

 茜の言葉がとても重く、そして力強く感じた。
 私はいつも父を困らせてはいけない「いい子」を演じていた。自分の気持ちは二の次。それが正解だと思って生きてきた。でも、そのことで間違った選択をして、不必要な関係を作り、自分が傷つくような結果をもたらしてる。

 こうして転職できたのも、こうして好きな人が現れたのも、自分が頑張って来たからで……。前に進むためには、次の一歩を踏み出さないと。


 *       *       *       *       *


 一晩が過ぎ、ほとんど寝付くことができないまま朝を迎える。そして寝不足のままコーヒーを流し込んだ。昨夜のことはまるで夢の中の出来事のように感じてしまう。

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