苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
インターホンを押すと、詳細をメールで送っておいたおかげで、すぐに担当の平河主任が顔を出した。彼はパティスリー経験者で、普段から無口で不愛想なタイプだ。そう分かってはいても、なぜかいつもより険しい顔をしているように見える。
「お疲れ様です。先ほどの件ですが――」
「来てもらって悪いけど、今回はすぐには応じられない」
いきなり拒否をされ、戸惑う。
「あの……どうしてですか?」
「先日も、Aチームが急に味の修正を伝えてきて。こっちは残業続きで、他にも業務が停滞してる状況だった。それなのに、メール一本で簡単な連絡だけで……。手足のように使われてる状況に、みんな腹が立ってる。今、こっちは不満が渦巻いて、簡単にはまとまらない。だから、今後は再度確認の上、チームリーダーと課長のサインをもらうように求めようと思う」
思わず何も返せなくなった。でも、このままでは仕事にならない。
「確かに、皆さんのお気持ちは理解できます。でもサインの話は、まだ周知されてなかったことで……」
「みんな爆発寸前なんだ。わかってくれよ」
どうやらこれ以上はお願いできそうもないらしい。
「了解です。今日中に製作スケジュールへ組み込んでもらわないと、全体に遅れが生じてしまうので。急遽、サインをもらいに行ってきます」
頭を下げ、慌てて駅へと戻る。とにかく会社へ急いだ。