苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
社内に戻り、若松さんに事情を説明する。彼は最近のAチームの単独行動に呆れていた。
「チーム内がバラバラでさ、雰囲気も悪い。リーダーがいるはずなのに、やたら後藤さんが目立っていたり。何かおかしいよな」
やはり後藤さんにはどこかいい印象を持つことができない。チームは違うとはいえ、同じ企画課だ。社内の足並みが乱れては、他部署との仕事に支障をきたしてしまう。この先どうなってしまうのかと、不安が滲む。
若松さんにサインをもらい、あとは課長を探すと伝えると、彼はすぐに表情を曇らせた。
「まずいな。今日は長澤香料さんへ行ってる。それも帰社予定は十八時だ。どうしようか……」
長澤香料は多摩地域に本社や工場を構えている香料の会社で、長く付き合いのある企業だ。所在地は駅から離れており、あまり交通の便がいい場所とは言えない。さすがに課長の帰りを待ってからでは間に合わないと思った。
「すぐに連絡を入れてみて」
急いで社用携帯の方へ電話をかける。けれども商談中なのか、なかなか繋がらない。
このまま待っていても埒が明かなかった。開発課からの信頼が薄れている今、さすがに事情を説明して済ませるわけにもいかない。