苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
長澤香料の本社まではバスに乗り換える必要がある。路線バスの行き先を確認し、乗り込むとすぐに出発した。走り出している最中、若松さんから連絡が入る。
《さっき課長と連絡取れたよ。向こうの事情で、一緒に車で都内へ向かっているらしい。道路が渋滞してるから、到着して先方との打ち合わせが終わり次第、開発課の方へ向かうって》
良かったぁ……。
ホッと胸を撫で下ろす。ひとまず課長が都内にいるのなら、何とか間に合うはずだ。すると若松さんから次のメッセージが届く。
《途中までバスに乗ってるんだよね? せっかくだから顔を出して、新しいサンプルをもらって来てくれない?》
通常は、サンプルは営業の方が定期的に持ってきてくれる。こんな機会もめったにないし、挨拶しておくことも大切だ。
《分かりました》
結局バスに揺られて担当者と会い、用事を済ませる。来た道を戻ると、帰りはすでに夕方になり周囲も薄暗くなっていた。
空にはうっすらとした月が浮かび、秋本番になったせいか、肌寒い風が足元を吹き抜けていく。
「はぁぁ……」
今日はイレギュラーなことばかりで目まぐるしい一日だった。ようやく会社へ戻れる。
あとは課長からその後の状況を確認して、今日のノルマをこなせば仕事を終えられる。