苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 井口さんがノリノリでこちらへ顔を向けると、同意を求めてきた。

「あぁ、構わない」
「えぇ、はい」

 課長と二人、ぎこちなく返事をする。

ノリのいい二人の友人たちは、こちらの様子にお構いなし。手慣れた飲み会のように、陽気におつまみを選び出した。
 先ほどから、あちら側とこちら側の会話の温度差が激しい。友人同士、まるで元々親しい間柄だったかのように、和気あいあいと談笑している。
 もしできるのなら、目の前を塞げる大き目のパーテーションをくださいと注文したい。

「ところで、二人は何の知り合いだったの?」

 井口さんは急に思い出したかのように、こちらへ話題を振ってきた。こういう状況なので、今はできるだけそっとしておいてほしい。

「お待たせしました。こちら生搾りレモンサワーになります」

 そこへまるで助け舟を出すように、店員がタイミングよくジョッキや搾り器などの一式を運んできてくれた。
 そして友人二人は楽しそうにレモンを手に取り、搾り作業を進め始めた。

 一方、課長はまるで仕事のように、目の前に置かれたジョッキへ黙々とレモンを搾っている。その姿はまるで、向かい側にいる私の存在を透明化したくて、集中しているように思えた。

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