苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
こちらも手持ち無沙汰だったので、レモンを搾る仕事ができてホッとしている。作業を終え、そのまま顔も上げられない。仕方なく、搾り終えたジョッキに口を付けて、ちびちびと飲んだ。
残された者同士、私と課長はひたすらジョッキを傾ける。それは、まるでお葬式のよう
に静まり返っていた。
それからしばらくお互い飲み物を口へ運ぶだけの時間が過ぎる。
もしかして……さっきの気まずい茜との会話を、思い切って尋ねた方が潔いかな?
でも、あくまで知らないフリを通した方が自然のような……。
いっそのこと、先手を打って謝っちゃえば気が楽になるかも。
しばらく悩んだ末、週明けに訪れる課長との関係性を優先した。
ここはまず、謝っておくのがベストかもしれない。両手でジョッキを抱えたまま、恐る恐る声をかける。
「あの……先ほどの会話のこと、なのですが……」
すると課長がジョッキを口元へ当てたまま、こちらをじろりと見上げた。
「何のことだ?」
「もしかして、聞こえていたらと……えっと、さっきしていた話は誤解で、ゴホッ……」
しどろもどろになりながら言い訳しているうちに、レモンの酸味が込み上げる。声を出そうとすればするほど、喉がヒリヒリと痺れた。