苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
「そうだな。面接で、誰かの心に残るようなお菓子を作りたいって言ってたよな」
「あれは……もう忘れてください。自分で思い出しても痛いのに」
あの時、精一杯の感情で課長に伝えた言葉をリピートされ、変な汗が出てくる。本心から出た言葉とはいえ、そんな大それた夢を実現させるには何年かかるのやら。
「大丈夫だ。芦原は我慢強いから、俺の圧にも耐えて、きっと達成できる」
「確かに。我慢強さだけには自信があります」
昔からその性格のまま抜け出せないから、変な相手に翻弄され、肝心の課長に告白ができないのだろう。
「ただ、抑えすぎて自分の感情をすべて消さないでほしい。だからこそ、メンターが必要だと思うんだ。芦原の力になっているかどうかは分からないが」
「もちろんです。充分なってます」
「無理に言ってるだろ?」
そう言うと、課長は晴れやかな笑顔を浮かべた。
今なら渡してもいいような気がして、バッグの中のポケットを探る。ジップ付きの袋からハンカチを取り出した。
「あの、これ……ありがとうございました」
「あ、あぁ。ずいぶん丁寧だな」
課長は少し照れくさそうにハンカチを受け取る。いっそのこと、気軽にこのままの勢いで、本音を伝えてしまえばいいのだろうか。そう思って口を開きかける。