苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
会社全体の雰囲気が、まるで薄い靄でもかかっているようで、心が晴れない。課長の噂を聞くたびに、こちらまで憂鬱な気持ちに引っ張られてしまう。
はぁぁ……。私まで巻き込まれたら、みんなと同じことになる。
こんな雰囲気を吹き飛ばし、課長が元気になるアイデアは……。
今まで助けてもらったのだから、せめてこんな時ぐらい彼を勇気づけたかった。
しばらく考え込んで、一つの答えを導き出す。
「そっか……」
課長が喜んでくれて私にできることといえば、これぐらいしかない。
仕事を片付けて会社を出ると、急いで必要な買い物を済ませて自宅へ戻り、キッチンへ立った。
そして準備を済ませ、意を決すると、課長にショートメールを送る。
《突然すみません。今夜でも、明日の朝でも、いつでもいいので連絡をください》
迷惑なことぐらい重々承知だ。でも今は、何か行動を起こしたかった。
その夜、八時になってスマホの着信音が鳴る。急いで取ると、低い声が響いた。
「今、……戻った。さっきメッセージに気付いて。――で、何があった!?」
なぜか呼吸が荒く、まるで慌てて電話をかけてきたような印象の声だ。