苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
課長は何も言わず、ただ黙って私を見つめている。
「上から目線で、偉そうなことくらいわかってます。経歴もまだまだですけど、仕事のグチや、些細な悩みなら聞くことはできます。だから――」
すると課長はこちらへ屈むようにして、私の顔に近付いた。彼の顔がますます距離を縮め、その視線を逸らせなくなる。
「こうして家に招かれて、手料理まで振る舞ってもらって。俺は勘違いしてもいいのか?」
彼が何を言おうとしているのか分からず、私は目を大きく開いた。
「ある仕事が片付いたら、話をしようと思っていた。メンターになってくれるのなら、心を開いて、すべてを打ち明ける必要があるな。俺には以前から、気になっている人がいた」
急に切り出された意外な話に、思わず緊張して力が入る。
「芦原の採用が決まった時、初めて挑戦する分野だと分かっていたから、成功してほしいと思った。だからこそ、こんな風に馴れ馴れしく接するつもりもなかった。それは芦原にとって邪魔なことだと思ったからだ。だが、本心は別にある。今はどうしようもなく惹かれて、もう……隠すことができない」
まさかの本音を知り、胸が熱くなる。これは現実なのだろうかと、何度も彼の顔を確かめた。