苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 彼の口元に柔らかな笑みが広がり、視線が重なる。
 こちらを覗き込み、瞳を奪われているうちに唇同士が軽く触れ、すぐに重なり合う。それからは何度も求められるようなキスが続いた……。

 ふと気付くと、私たちはキッチンで立ったまま、十五分近く過ごしていたらしい。

「ごめん。疲れたか?」

 好きな人がこんなにすぐ傍にいることが不思議で、どこか気恥ずかしくて、視線を上げられずにいた。

「課長こそ、仕事で疲れてるのに……」
「これから二人で会う時は、課長じゃなくてもいいだろ。陽貴でいい」

「それなら私も……明奈がいいです」
「お互い、名前を呼び合うことから始めないとだな」

 そう言って、陽貴さんは顔を近付けると、再び唇を重ねた。
 しばらく甘い時間を過ごした後、二人で手作りスイーツを楽しく味わい、気付くと深夜を過ぎている。

「さすがに、もう帰らないとだな」

 陽貴さんが帰り支度を始める。さすがに「泊まって行けば……」とも言えず、玄関口に立つ背中をそっと見上げた。

「戸締りをしっかりな」
「はい……」

「どうした? がっかりしたような顔をして」

 残念な気持ちが顔に出てしまったのだろうか。実際、このまま陽貴さんが帰ってしまうのはちょっと寂しい。

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