苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
「カレー、鍋いっぱいに作ったんです。だから……」
そう呟いている最中、いきなり腕を掴まれる。驚いているうちに、彼の懐へ抱き寄せられた。彼の触れている場所が再び熱を帯び、そのまま両腕で強く抱きしめる。屈み込むように顔を近付けると、私の耳元へ囁いた。
「精一杯我慢して、帰ろうとしてる俺の気持ちを挫くなよ」
その言葉に、さらに熱が急上昇し、崩れ落ちそうになってしまう。しばらく抱きしめてから、彼はその腕を緩めた。
「明日の朝、ここへ来るから。その時に、またご馳走してくれないか?」
嬉しすぎた私は声も出せず、必要以上に何度も頷いた。彼がそっと離れると、玄関へ向かい、部屋を出て行く。ドアが閉まり、私は思わず、へたり込むようにして座り込んだ。
「もう、今夜眠れないかも……」
その場所からしばらく動けず、ぼんやりしたまま時間が過ぎる。その夜は、さっきまでの出来事が一晩中頭の中を巡っていた。
* * * * *
そして翌朝、本当に陽貴さんがカレーを食べに来てくた。出かける用事があるからと、昼前には帰ってしまったものの、ちょっとだけ恋人気分を味わい、幸せな週末を過ごすことができた。