苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 そう伝えると天野さんは視線を泳がせ、戸惑った表情を浮かべた。

「もしかして、何か困っていませんか? それとも、気付いたことでも? 一切他言はしません。だから、少しだけでも――」

「いいえ、知りません! 私は、何も知らないんです」

 私の言葉を遮り、そのまま背を向けると、慌てて内階段の方へと消えてしまった。

 どうして……? 何をそれほど恐れているのだろう。
 せめて、今の後藤さんの状況を知ることができたなら……。

 自分の席へ戻り、スマホを手にする。部長がここへ来て、告げていった内容だけでも伝えようと、陽貴さんへメッセージを送った。

 すぐに返信をもらい、《その件については対処する。心配するな。》とだけ送られて来る。今夜は仕事で遅くなると聞いていたので、明日出社したらどこかのタイミングで彼と話をしなくては。
 でも、先ほどの部長とのやり取りは、伝えられそうにもない。

 もしかして、企画課(ここ)にいられる時間はそう長くないかもしれない……。

 窓の外を見るとすでに日が沈み、外は薄暗くなっている。深く息を吸い込み、この状況を何とか打開できることを願った。



 *       *       *       *       *



 翌朝、少し早めに出社すると、企画管理本部の入り口に数人の社員が集まり、ざわざわしている。何事かと、その中へ近付いた。

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