苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 今までは自分のチームや、近い範囲のことばかり考えていたような気がする。今後はもっともっと他チームとの交流を増やし、お互いの刺激をもらえたら。そうすれば、会社(ここ)が、より活躍できる場所になるはずだから。

 前職で自分が経験したような、辛い立場の者が黙って辞めなくてはいけない状況は、見たくはない。
 ホッとして力が抜けたら、何だか肩の荷が下りたような気がした。安堵して自分の席へ戻ると、課長から声が掛かる。

「少しだけいいか?」
「はい……」

 会議室へと呼ばれ、二人で入るとドアを閉めた。背中を向けていた課長が振り返る。先ほどまであった硬い表情が、いつの間にか穏やかな顔になっていた。

「やはり、メンターは芦原の方が向いているようだな。天野をさりげなくフォローしてくれて、ありがとう。俺の力不足で、こんな状況にさせてしまったことは反省してる。彼女は何も悪くない。大切な社員の一人として、まだまだここで活躍してほしいからな」

「そんな。課長に責任があるわけじゃ……。私は、昔の自分を思い出してしまって。辛いままで辞めてほしくなかったんです」

 課長に見られていたとは知らず、気恥ずかしくなる。真正面から見つめてくる彼の瞳に、思わず視線を逸らした。

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