苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
「それから、昨日部長に楯突いたそうだな」
誰から聞いたのだろうか? 慌てて彼の顔を見上げる。
「知ってたんですか!? だって、このままだと課長が……」
「若松に聞いた。まさか、俺のことを心配してくれて……それで、あんなことを?」
課長は一歩私に近付き、こちらの顔を覗き込んだ。
「結局、何の役にも立ててませんけど……」
勢いで部長の前に立ったものの、昨夜までは今後の業務のことや、企画途中の仕事が気になって、眠りも浅いままだった。
「今まで黙っていたが、実はここ数ヶ月、社長に依頼され、部長の動きを裏で探っていた。後藤さんの件も怪しいと思い、警戒していたところだった。天野がああいう形で動くとは思わず、こんな展開になったが、芦原にも助けられたな」
「え!? もしかして、全部? 分かって、いたと――」
ということは、課長に元気付けるために悩んで、一人立ち回っていた私って……。
「やっちゃった……」
思わず両手で顔を覆い隠し、自分の行動を振り返る。すると、課長の指先が私の手を優しく振りほどいた。
「何を反省してる?」
「だって、カレーとか作って課長を励まそうと……それに、メンターまで」