苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
陽貴SIDE3
芦原を会議室へ呼び出し、部長の件で密かに動いていたことを打ち明けた。こうして社内が落ち着きを取り戻せたことで、ようやく彼女にも本当の理由を伝えることができる。
社長から呼び出されたのは数カ月前のことだ――。
*
最上階にある社長室へと向かうと、秘書に案内され応接室に通された。社長はソファーに座り、リラックスした表情を浮かべている。
「急に呼び出して悪いな。先日発売した、レトロシリーズが好評だと聞いたが」
「はい。最近は、復刻したパッケージが全世代に受けているようです」
社長は四十代でこの会社を引き継いだ。常に革新的で、変化を求めている。そのため、こちらもそれに応えられるよう、日々努めていた。
「実は、頼みたいことがあるんだ」
社長の顔がいつもより強張っているのを感じ、身を引き締める。
「以前から懸念していたが、長谷川部長のことで、内密に動向を探ってほしい」
社長は以前から部長の動きを警戒していた。まだ新人で経験も浅い後藤英美里を、強引に商品企画課へ異動させ、密かに動かしやすいチーム作りを行っているのではないかと考えていたからだ。
一冊のファイルをテーブルに置き、中身を見るよう指示された。ファイルには調査書が収めてあり、長谷川部長の経歴が書かれている。