苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~


「それは……順調に成長しています」
「何だ、急に顔色が変わったな。特別な思い入れのある新人なのか?」

「い、いえ。まだ、発展途上で、行き届かない点もありますので、これから鍛えて、伸びるかと」
「藤生から鍛えられたら、嫌でも伸びそうだな」

「最善を尽くします」

 変な汗が出る。社長からも期待され、芦原のことを大切に扱うべきだと、改めて感じた。彼女に想いを募らせたまま、ただ踏み込めない日々を重ねるしかない。そう思っていたはずだった。




 芦原からのメールで急いで駆け付けたあの夜、すべての答えに辿り着く。

 掲示板騒動の数日前、芦原からの連絡に驚き、彼女の自宅へと駆けつけた。そこまでする必要もなかったはずが、頭より先に体が動いていた。

 まさか自分を元気付けるためにカレーを準備してくれていたとは思わず、心が揺らぐ。
 メールを見て、焦って自宅へ駆けつけている時点で、俺はもう彼女の心の内側に踏み込んでいるのだろう。

 仕事をサポートすることも重要だ。
 ただ、自分にとって何よりも大切な存在は、彼女だ……。

メンターと称して、仕事のつもりで距離を縮めていたが、ずっとこのままの関係でいることはもうできない。そう強く感じた。

 二人でカレーを食べた後、俺は、彼女がキッチンに立つタイミングで隣に立った。

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