苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
「いいんです。一般的なイベントは全部、陽貴さんと経験してみたいので」
「そう言われると、何も言えないが……。俺は明奈が希望するなら、どこでもいいよ」
どうやら課長は、普段、企画立案に携わっている者が、恋人たち定番のクリスマスの過ごし方を、そのまま実行しようとしていることに、どこか恥ずかしさを覚えるらしい。
陽貴さんが急に立ち止まり、ぼそっと呟く。
「――それより……レストランの帰りに、俺の部屋へ寄っていくのはどうだ?」
「……え」
驚いた私は顔を上げ、視線を合わせようと、彼の瞳を追いかける。すると、なぜか彼は視線を逃れ、片手で前髪をかき上げたまま、言葉を詰まらせている。
もしかして、クリスマスの企画がうんぬんとかじゃなく、そっちが本音?
「いや。別にそういう意味じゃなく。……忘れてくれ」
こちらまで、すっかり熱っぽくなってしまう。彼の部屋に誘われたなら、どういう意味であっても私は構わない。
「その企画、絶対に賛成です」
私はこっそり右手を上げ、率直に答える。陽貴さんは小さく「あぁ」とだけ言うと、私の手を取り、そっと手を繋いだ。
*
そのやり取りを思い出し、決意する。
とにかく、今夜は何があっても予定通り、特別な夜を過ごす!