苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

「はい……。無理に動かしたり、触らなければ、大丈夫……みたいです」
 
 彼の手が私の肩へ伸ばされ、さらに顔を近付ける。そして唇が触れるほど距離が縮まり、低音でそっと呟いた。

「できるだけ優しく扱うよ。それなら、俺のベッドへ連れて行っても構わないか?」

「……ん」

 尋ねられたことに頷いている最中、唇が触れ、幾度となく重なり合う。ベッドへ辿り着く前に、二人でソファーへ倒れ込んだ。
 スタンドライトの灯りが二人を照らし、夜の景色に滲んだまま、ゆっくりと溶けていく。




  瞼を開けるとベッドの中、窓からは陽の光が差し込んでいた。すぐ隣には、整った横顔が見えて、思わず頬が緩んできてしまう。

 そうだ。昨夜は陽貴さんの部屋に泊まったんだった……。

 こんなに近くで眺めてもいいなんて、何だか特権のような気がする。
 その眺めにうっとりして、瞬きもせずに彼の顔を見つめた。
 少し前まで苦手だったはずの人が、今ではすっかり、いつまでも追いかけていたい人になっている。

 もっともっと、彼のことを知りたい。こんなに夢中になってもいいのだろうか……。

 ふと昨夜のことを思い出し、熱が上がりそうになった。ベッドの中で何度も名前を呼ばれ、「ずっと見つめさせて」と囁かれて。耳の奥でその余韻が残り、二人の場面が頭をかすめる。

「何をニヤニヤしてる?」

< 186 / 193 >

この作品をシェア

pagetop