苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
笑い声を上げながら、駅へ向かって二人で歩く。こうして隣で笑い合えれば、それだけで充分に思える。
その後、飲み会は志田さんと佐伯さんが盛り上げてくれて、楽しい会で終わることができた。やはりこのメンバーが変わってしまうのは、ちょっぴり寂しい。
二時間後、全員が店の前で解散したところで、陽貴さんと約束していた待ち合わせ場所へ向かう。
プラットホーム八番線乗り場へ行くと、彼が先に到着して待っていた。私を見つけると、にこやかな笑みを浮かべた。
彼も私もまだ酔っているのか、それとも宴の興奮が冷めないのか、お互いの顔を見つめ合って笑顔が止まらない。到着した車両に乗り込むと、二人で窓際に立った。扉が閉まり、列車が走り出す。彼が体を屈ませ、私の耳元まで近付くと、そっと呟いた。
「今夜の行き先は、俺の部屋だから」
私は思わず全身が熱くなり、足元へ視線を落とした。まだこんな風に誘われるのは慣れてない。
彼の住まいがある駅で下車すると、マンションへ向かう。駅から続く街路樹の道。深夜になり、人通りはほとんどない。季節は真冬で、風が刺すように吹いている。冷たさに、思わず両腕をさすった。
そんな私を見ていたのか、すぐに彼が指先を伸ばし、手を繋いだ。その手の温かさに、一瞬で春のような穏やかな気持ちになる。
「近いうちに、挨拶に行こうと思う」
「――へ!? 誰にですか?」