苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
この症状は少し休めば回復することは分かっている。対策は目を閉じて、休むことだ。
「すみません。少しここで休めば……」
すると課長は、そのまま私の肩を抱き寄せ、自身の方へと寄り掛からせた。
「あの……」
「動くな。しばらくこのままでいろ」
強い口調で伝えてきたけれど、言葉とは裏腹に、肩に置かれたその手は優しく温かい。
この温もり、ちょっと落ち着くかも……。
肩に置いた課長の手の重みとその温度が、不思議と不安な心と痛みを和らげ、そっと包み込んでくれる。
さっきまで拒否していた相手に、こうして助けてもらっているなんて。誰も知らない都会の真ん中で、頼りにできるのはとても心強い。今は何も考えず、素直に目を閉じることにした。
十分ほど過ぎただろうか。吐き気が収まり、次第に頭痛が遠のいていく。課長は無言で私の体を支え続けてくれた。
地下鉄の騒音と人々の喧騒。列車が通る度に私たちの足元を風が駆け抜ける。季節は秋だというのに、地下鉄の駅は熱がこもり、構内には生暖かい空気が流れていた。
薄っすらと瞼を開けると、目の前の列車からたくさんの人が降りてくる。そして、前を通るたびに、チラチラとこちらへ痛い視線を向けられているような気がした。