苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
きっとベンチでイチャイチャしているカップルのように見えるのだろうか。急に部長を巻き込んでしまったような気がして、申し訳なさを感じる。
「すっ、すみません! もう大丈夫です」
ガバッと体を起こし、課長に寄り掛かった体勢を立て直す。いきなり背筋をピンと伸ばしたせいか、キーンとした痛みが頭に響いた。
「痛ぁっ……」
こめかみを押さえながら、思わず声が漏れる。
「おい。いきなり体を起こせば酷くなることぐらい分かるだろ!」
課長は真剣な眼差しで眉を寄せ、注意するようにこちらへ顔を近付ける。メガネの奥にある流線形の目元が間近に迫り、思わぬ距離間に心臓がドキリと跳ね上がる。
「ご、ごめんなさい」
ひとまず謝ると、体を縮めたまま課長から距離を取った。
「謝る必要はない。ただ芦原は、いつも最後の詰めが甘いんだ」
課長は片手でメガネの位置を直すと、まるで装備を整えるように姿勢を正した。
いつも通りの彼のセリフが、変な空気をすべて消し去ってくれる。
「あの……だいぶ良くなりましたので」
「本当に大丈夫か?」