苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
《明奈、きちんと食べているか? 仕事は順調なのか? 次はいつ帰ってくるんだ?》
返信する気が失せ、ひとまずスマホを伏せた。
私の実家は北関東にあり、大学へ入学と同時に、ずっと東京で一人暮らしをしている。
実家には教師の父が一人で生活していた。母親は幼い頃に病気で亡くなり、父が一人娘の私を育ててくれたのだ。大学を卒業後も東京で暮らすつもりだと伝えた時は、父は仕方がないというような顔をしていた。
職業柄なのか、父は何かを適当に行うということが許せないタイプだ。そんなわけで、私も普段から何事も真面目に取り組んできたつもりだった。そんな父との生活も、高校時代には窮屈に感じ、大学は上京を意識して進学した。あれからしばらく離れた生活をし、節目には帰っているものの、普段はこうして定期的に連絡が来る。
仕事を初めて数年。誰にも邪魔されない一人暮らしは、気を抜けば緩んでしまう。
週末には溜まった家事を済ませ、好きな動画を見てぼんやり過ごすことも多い。
時には商品リサーチのためにデパート巡りもするけれど、好きな仕事に就いたはずが、やはりストレスはなくならない。
明日はいつも通りの月曜日。そう心の中で呟きながら一日を終える。これで課長との変な距離感は、週末ですっかりリセットしたつもりだ。