苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
志田さんの情報によると、課長は国立大で経済学を学んだエリート。数字にも強く、プレゼンもデータ分析を駆使し、理詰めで進めたという話だ。
彼女によると、上層部の顔色を窺わないところは、ある意味男らしいという。相手によって態度を変えないところは、女性からは冷たく映る彼の姿も、男性社員の受けはいいらしい。
「でも凄いのは、課長はプレゼンの時だと別人のように人を惹きつけて、自然とクライアントには伝わるんだよねぇ。的確な数字を示して相手を納得させちゃうんだから、あの姿も実は戦略の一つなのかなぁ」
彼の徹底した仕事ぶりは時に不必要な感情を排除し、徹底して業務を行う姿勢にある。
そして、いつしかついたあだ名がアンドロイドとか……。
確かに仕事ができることは理解できる。でも、あの冷たいメガネの眼差しで睨まれてしまうと、どうにも委縮してしまう。
「芦原さん、先週のブレストまとめたやつ、課長に提出してチェック受けて」
パソコンから顔を上げ、若松さんがこちらへ催促した。
「は、はい」
まさか今週になって課長の元で仕事をするとは思っておらず、アイデアを取りまとめたファイルを改めて開く。不安ながらもキーボードを叩き、間違いがないか何度も見返した。そして恐る恐る、課長宛てにファイルを送信する。