苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
「あの、課長……。さっき送ったファイルの問題点についてじゃないんですか?」
「いや。それは問題がなかった。さっき食事をしながら、軽く雑談でもしようと返信しておいたが」
「返信……?」
返事を待ってパソコンにかじりついていたはずが、途中から課長のことで意識が削がれ、何度かふらふらと席を離れていた。どうやらその間に返信が届いていたようだ。
「理解して、ここへ食事をしに来たんじゃないのか?」
「いえ……すっかり、先ほど送ったファイルの件だと思っていました」
「何か齟齬が生じていたようだな。このランチの目的は、問題点を洗い出すためだ。個人的な悩みについて質問を重ねる必要があると思って……。つまり、これはあくまでメンターの立場からの行動で……」
何やら遠回しな言い方で、堅苦しい言葉を羅列させた。スプーンを片手に、課長は困ったような表情を浮かべている。部下をランチに誘うのに、正当な理由でも必要なのだろうか。
「とにかく、今はお互い自然な雑談をしよう」
「は、はぁ……」
いきなり雑談と言われても……。
ぎこちないやり取りに困惑する一方、戸惑っているような課長の様子に、吹き出しそうになる。