苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
課長、本当にメンターの研修を受けたんだろうか……。
雑談するにも許可がいるような相手と、自然な会話なんて続くわけがない。そしてランチも喉を通りにくくなる。
まさか課長とのやり取りが、一番気が重いんです……とも言えず。さすがに息苦しくなったのか、彼は咳払いをして静かに呟いた。
「実は、俺は根拠のない分野が苦手で……。質問の仕方を変えよう」
彼は少し焦ったようにメガネの位置を直すと、視線を彷徨わせてから思いついたように言葉を発した。
「そうだ。先週、君が発症した閃輝暗点の話だが、食品や生活習慣、ストレス……などで悪化するということらしい。ストレスは……いや、気になることがあれば、遠慮せずに言ってもらえたら……」
これではメンターの質問というよりは、取り調べのようだ。ふと、刑事の姿をしている課長と、追いつめられている犯人の自分を思い浮かべた。
「ぷぷっ……」
ついに吹き出してしまい、慌てて口元を抑える。課長は真剣な顔をしたままだ。
「すみません。わざわざ調べてくれたんですね」
「いや、そういう訳では……」
課長は視線を泳がせ、指先で口元を隠すように覆った。あれから心配してくれていたことが伝わり、少しだけ嬉しくなる。