苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
でも、気になるものは気になるわけで……。
あぁ、もう何だか訳が分からない。
気が抜けて、すぐにでも自宅へ帰りたくなった。いつものように駅へ向かうと、定期券の入ったパスケースを機械にかざす。
ぼんやりとしたまま、ゆっくりした足取りでプラットホームに降りた。
「――先ほどあった車両故障により、到着時間が少々遅れています」
急にアナウンスが流れ、タイミングよく電車が滑り込んでくる。
電車、遅れてるんだ……。
普段は新しいお店や食材店回りなど寄り道して帰るけど、今夜はまっすぐに帰って正解だ。
電車に乗り込むと、車内広告を見回す。普段からこういった広告に触れ、他社の宣伝方法を参考にすることもある。
仕事柄、何でもアイデアの糸口になるため、車内では周囲を見回すことが習慣化していた。
ふと隣の車両に目をやると、周囲より背の高い男性の姿に目を奪われる。
――えっ!?
そこに課長の姿があった。まさか同じ方向の電車に乗っているとは思わず、バッグを持ち上げ顔を隠す。
な、何やってんの……私。
ただ、いつも通りに帰宅しているだけなのに、これではまるで、課長を尾行しているみたいだ。ただの偶然の重なりが、何だか不自然に思えてきた。