苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
別に後を付けてるわけじゃ……ないから。
そう思いつつ、電車が駅に停車する度に課長の行動が気になり、チラチラと視線を送る。しかし、いっこうに降りる気配がない。彼の向かっている場所がどこなのか気になった。あと二駅すれば、自分が住む駅に到着してしまう。
意味もなく心音が高まり、まるで相手を追跡している探偵のような気持ちになった。
注意深く観察していると、課長は私が住む一つ手前の駅で下車する。思わず、私も同じように電車を降りた。人混みに紛れて移動し、彼が改札を出た後に続いて行く。
このまま追いかけていいのかな……。
悩んでいるうちに、体は勝手に彼の後を追っている。でも、どこか悪い事をしているようで、ついて行くか、やめるべきか悩み始めた。
いくら噂が気になるからって、これはまずいよね。
駅前の通りに出ると、私は自分の行動に違和感を抱き、足を止めた。すると、少し離れた場所にいた課長が同じタイミングで立ち止まるのが見えた。
えっ……。
課長はとある店の前で立ち止まっている。そしてそのまま、ガラス張りになっている店の入り口に近付き、中へと入った。外観からは、お洒落なカフェのように見える。