苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
店内を改めてぐるりと見回した。壁の一角には、先ほどのオーナーと犬たちの写真が飾られ、楽しそうな笑顔で写真に納まっている。
自分の店を持ち、こうして働きながら輝いているのだから笑顔も素敵だ。それに仕事ができる課長が、この店をサポートしているのは何も不思議ではない。
しばらくして彼が戻って来た。
「用事は済んだ。コーヒーを勧められたが、長くなりそうだから、また来ると伝えておいた。もし時間があるのなら、別な場所で食事でもして行くか?」
「あの……急に現れて、すみません。私が課長と、ご一緒してもいいんですか?」
「嫌なら誘わない」
「それなら行きます!」
「芦原こそ、無理してないか?」
課長は腕組をすると、真剣な顔で尋ねてくる。
「いえ。そんなことないです」
先日の課長とのランチは緊張したけれど、今夜は少々事情が違う。それに、もしタイミングがあれば、あの噂の真実も聞いてみたい。
二人でドッグカフェを出ると、駅へ戻る。そして、駅直結の商業ビルに入るイタリアンレストランへと移動することになった。
ビルに設置されているシースルーエレベーターに乗り込む。ガラス戸からは外の景色が見えた。二人きりのエレベーターの中、不意に課長は私に尋ねる。