苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

「あ、あの。わざと課長を追いかけていたわけじゃなくて。私の住まいがある駅は、一つ向こうの駅なんです。まさか同じ電車で見かけるとは思わなくて。驚いて、そのまま降りてしまって……」

 どこまで伝えればいいのか分からず黙り込む。

「そうか。俺たち、意外と近くに住んでいたんだな」

 課長は急に真面目な顔をして、グラスを一気にあおった。そして、なぜかこちらに軽く頭を下げる。

「俺も白状するよ。実はあの週末の夜、居酒屋で顔を合わせた時、嘘をついた。芦原が友人としていた会話は、しっかり聞こえていたよ」

 いきなり伝えられた事実に一瞬息が止まる。うやむやにするつもりだったはずが、はっきり聞こえたと言われ、課長に対する本音が伝わってしまったと一気に焦り出す。

 アンドロイド課長とか。ストレスとか。そういう目で見てないとか。
 うわっ。なんて失礼……。

「ごめんなさい!」

 思い出しただけでも赤面もので、思わず両手で顔を塞ぎ、痛すぎる状況に目を閉じた。

「待て。気にする必要はないんだ。俺は何とも思ってないから」

 その言葉が耳に届き、瞼を開ける。ゆっくりと顔を上げ、目の前にいる彼を見た。
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