苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
アルコールのせいなのか、それとも彼が身に纏う壁が薄くなったせいなのか。今の課長は、仕事中に見かけることのない、穏やかな顔をしている。
「ただ、できれば率直に言ってほしい。ストレスの原因は……俺なのか?」
「いえ。違います」
すぐに顔を横に振り、慌てて否定した。確かにあの晩まではそう感じていたこともある。けれど今は、その感情は別なものに変化していた。上手く伝えられなくて言葉に詰まる。
「メンターとして、このままじゃまずいと思った。芦原にストレスを与えていたことを知って……反省してる。もしかして閃輝暗点の原因も、俺のせいなのかと思って」
誤解されていると知り、身を乗り出して課長へ顔を近付ける。
「違います! 課長がストレスの原因でああなったんじゃありません。これは私の持病みたいなもので、体調や睡眠、食生活とか。自分にも原因があって起こる症状だと思います。あの夜、助けてもらって心強かったし、感謝してますから」
勢いよく答えてしまい、課長が驚いたような表情でこちらを見つめた。
「――分かった。それなら安心したよ」
理解してもらえたと安堵し、肩に入った力が一気に抜ける。
課長はテーブルに並んだ料理を少しずつお皿に取りわけてくれた。