苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
SCENE1 気まずい夜
課長との出来事……。
それは、先週の金曜日まで遡る。
仕事終わりに友人の水樹 茜から連絡が入り、誘われて入ったのは、現在の職場から最寄り駅のすぐ傍にある大衆居酒屋だった。入店してまだ三十分も過ぎていないのに、目の間にいる茜はすでに気怠そうにしている。
「それでさぁ、明奈聞いてる?」
「あ、うん……」
私は戸惑いの感情を抱きつつ、目の前にあるサワーが入ったジョッキを傾けた。
茜は据わった目つきでこちらを見つめ、深いため息をつく。淡いピンク色に塗った唇を尖らせ、綺麗な爪で長い髪をかき上げた。片手にはビールが入った大ジョッキがあり、すでに三杯目だ。
「ねぇ茜、大丈夫? さすがにちょっとピッチ速くない?」
彼女との出会いは、前職で所属していた食品会社の営業部だった。同い年で同期。二人とも営業補佐を担当していた。その会社はいわゆるブラック企業で、女性に対する差別もあり、当時は働きづらさを感じていた。
こんなのおかしい。そこで二人とも転職を目指そうと意気投合する。