苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

「人生を変えなきゃ」と先に会社を辞めたのは彼女で、やりたいことをやると宣言し、エステの仕事をするために猛勉強をして見事転職を果たした。

 こちらもそれが刺激になり、好きだったHINOコフレの商品企画課に転職をすることができたのだ。そんな前向きな彼女がどこか恩人のように思えて、急な誘いを断りきれなかった。

「でね、店長が私にだけ嫌な客を振ってきてさぁ。忙しい合間に彼氏には裏切られ、もう。なんだっつーの!」

 彼女が持っていたジョッキを振り回し、テーブルに置かれた食器にぶつかりそうになる。

「わぁぁ、危ない。ちょっと茜、飲み過ぎだよ」
「だいじょーぶ。今夜は酔わないとやってらんないの。そりゃあ明奈はいいよ。有名なお菓子会社に入って、楽しそうな企画立てたり……」
「そんなこと……。こっちだって嫌なこともあるし、合わない人だってい……」

 おおっと危ない。口が滑りそうになり、それを塞ぐように、おつまみの枝豆を放り込んだ。
 ここは会社の最寄り駅で、関係者と遭遇する確率が高い。言うつもりもないのに、調子に乗ってうっかり誰かの話題を出せば、まるで悪口を言ってるように聞こえてしまう。

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