苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
「それより明奈、この前言ってたのどうなった? 同じ部署のアンドロイド課長――」
明奈。同じ部署。課長。聞き慣れたようなキーワードが耳に刺さる。
しばらく会話が続き、足元を見ると箸が転がってきた。ガタンと椅子を動かす音がして、目の前に女性の姿が現れる。
それは間違いなく同じ部署で働く、Cチームの芦原だった。
先程の会話が頭の中を過り、俺は振り向いたまま動きを止めた。彼女は座った状態で身を屈ませ、こちらを上目使いで見上げている。視線が重なり、丸い目がいっそう大きく見開いた。
「あ……」
明らかに動揺している彼女を見て、こちらもいっそう焦る。まさか、聞くつもりもなかった会話が、必要以上にすべて耳に届いてしまっている。
もしかして、俺が……ストレスの元凶なのか?
すっかり吹っ切れた友人は、芦原たちに飲もうと誘い出した。目の前にいる芦原は不安そうな表情を浮かべている。
まったく井口の奴、こっちの状況はまるで無視か。こんな時に、飲みに誘うなよ……。
その場の流れで芦原の前に座り、どうやって言葉を交わしていいのか迷った。今できることは、これ以上彼女にストレスを与えないことだ。