苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

「とにかく、そろそろここは切り上げて、別の店にでも行こうよ」
「う~ん……もうちょっと飲んでから~。それより明奈、この前言ってたの、どうなった? ほら、中身が機械みたいだっていうアンドロイド課長。感情を読み取れないのが微妙にストレスって嘆いてたじゃん。で、本性は見抜けたぁ?」

「えっ……」

 意外に大きな茜の声が耳に届き、思わぬ発言に心臓がギュッと縮む。

「言ってない。そんなこと言ってないって」

 慌てて否定して、周囲を見回す。学生時代に居酒屋バイトで鍛えたという茜の通る声が、店内中に響き渡ったような気がして焦る。どうやら知っている顔はいないようで、ホッと胸を撫で下ろした。

「きゃはは。言ってたじゃん。いい感じでまとまった意見をひっくり返されるって。AI搭載で、アイデアを判別してる課長とかって、笑える~。そういうタイプに限って、自分に自信がないんだよ~」
「いや、そういう訳じゃ……」

 課長は根拠を大切にする。何に基づいての意見なのかをはっきりさせておかないと、曖昧な態度では受け付けてもらえない完璧主義者なのだ。冷静な課長の顔が脳裏に浮かび、思わずため息が出た。

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